『従業員も巻き込むランチェスター研修で、会社の文化を変えていく』株式会社比良タイヤ工業所 | ランチェスターマーケティング - タイヤショップ・整備工場のランチェスター戦略コンサルタント
2024.06.27
クラウド型商圏分析レポート

『従業員も巻き込むランチェスター研修で、会社の文化を変えていく』株式会社比良タイヤ工業所

“中継ぎ”として父から会社を託された

まずは、事業紹介と田中様が社長職を継承された経緯からお話をいただけますか

田中 様:地元密着の“まちのタイヤ屋さん”です。タイヤ店が6店舗、フィットネスクラブは2店舗、さらに無店舗型の自動車整備事業も展開しています。メインとなるタイヤ販売事業については、乗用車専門店だけでなく運送系も展開しています。周辺には運送会社に対応できるタイヤ屋さんはそこまで多くありませんので、地域の運送会社の9割をカバーしています。

株式会社比良タイヤ工業所 取締役社長 田中 佑弥様

現在は、父の希望で早めに代替わりをして、私が3代目社長として経営に携わっています。もちろん、私自身、会社を継ぎたいという意思は昔からありました。18歳でこの会社に入ったときに、従業員から「おじいちゃんが作ったこの会社を、息子が継がなくてどうするのか」と言われたこともあります。しかし、父のなかには「社員全員を独立させて全員を社長にする」という意識があり、「息子に継がせるつもりはない」と聞かされていました。

ところが、祖母が57歳で他界したこともあり、父から「55歳まで働いて残りの2年は遊んで暮らし、それから死にたい。社員のためにも中継ぎをして欲しい」と言われ、28歳のときに社長に就任することになりました。

「中継ぎ」という言葉をどのように受け止めていたのですか?

田中 様:とくにネガティブなイメージはありません。自分が中継ぎとなって会社を続けていき、そのなかで自分がどれだけ飛躍できるかを考えました。当時、すでにランチェスターと出会っていたので、その影響が大きかったと思います。

任期は5年と言われているので、その5年で何をどこまでできるか。会社を永続させるためには何をすればいいのか、という考えに頭が切り替わりました。自分の能力をしっかりと高めて、誰に会社を継がせても大丈夫な状態を作り、そして自分が早期リタイアをしたのちに儲けられる仕組みを作るためにはどうするか、ということを考えました。

“すでにランチェスターと出会っていた”とのことですが、それはどのようなきっかけがあったのでしょう

田中 様:父が参加した研修でランチェスターと出会いました。社員に会社を継がせたいという願望を持っていたので、その人たちが学ぶ戦略としてランチェスターが適していると考えていたようです。私も社員として研修に参加していました。

山口さんと最初にお会いしたときは、驚きの連続でした。研修に参加するにも初めてでしたし、聞いたことのないワードのオンパレード。山口さんはかみ砕いて説明してくれていたように思いますが、普段、タイヤについての会話しかしていなかったところに、急に「集客とは?」という話をされても、なかなか頭に入ってきませんでした。

正直に言って、結局その研修会だけでは理解ができませんでした。しかし会社が、古く長い歴史の殻を破るためには若い意見や知識が必要だという話を聞いたこともあって、若手社員だけの会議も開くようになりました。そちらにも山口さんに入っていただき、今困っていることについてランチェスター的に分析をしてくれて、どうすればプラスに持っていけるかということを一緒に考えていきました。

当時の私たちには上司に対する不満がありました。会社の体質的にこれまでのやり方を変えることができずにいたのです。若手の中で“これはおかしいな”と思うことがあっても、知識や知恵が足りなかったので上手く伝えることができませんでした。そこに対して、若手会議で学んだ知識を駆使して「こうしたらもっと良くなる」と提案できるようになりました。そうすると毎月、新しくできることが増えていって、そのときに改めてランチェスターの素晴らしさを実感することとなりました。そして会社が変わっていく実感も持てるようになりました。

例えば、これまでは、「忙しい日」といっても実際に1日にどれくらいの台数を指しているのかすら把握していませんでした。それを数字で管理していくと、1日の予約台数が30台を突破した段階で予約を止めていることが分かったため、それを倍の60台に変更しました。

また、ランチェスターの中では商圏を自分で決めますが、その商圏の中でアプローチすることで年間60件だったものが400件にまで増えました。そうなると、「これも出来るのでは」といった想像がたくさん湧いてきて、トライすることがとても楽しくなりました。

29歳のときに経営者になりましたが、それはランチェスターによってどんどん仕事が楽しくなってきたタイミングでもありました。父から指名されたときには、きちんと分析して仕事をすれば成果が出るという面白さを理解していたので、“自分が会社を引っ張っていくのもアリだな”という気持ちは持っていました。

24時間フィトネスジム FIT HIRA(フィットヒラ)
フィットネスクラブ 店内の様子

ランチェスター戦略に則ってはじめた新規事業

経営者になってからも、山口さんとのお付き合いが続いているのですね

田中 様:先代がランチェスターの考えを元に立てた戦略が従業員である私たちに降りてきていたので、とても分かりやすかったです。自分が経営者になり、さらに理解が深まったと感じています。今では“これがないと困る”という感覚ですね。例えばランチェスターには「No.1を作る」といった言葉がありますが、私にとっては、すべて自分たちを分析するためのツールだと思っています。四則計算のような整理整頓術だと思っているので、それを使って自分の経営状況を数値化することに特化させています。そして。それを元に経営をしていけば、給料が業界平均よりも大幅に上回り、みんなが幸せになると考えています。

仕事の整理整頓がしやすいので、ランチェスターがなければ本当に困りますね。きちんと考えて、その結果を行動に移していけるのは、私の性格的にも合っているので、とてもやりやすく感じています。

先代が私たちに、小さな成功体験を作ってくれていました。当時は、理由が分からないけれどもお客さんが増えてくるという感覚でしたが、それを分析してさらに結果を出すという若手のときの成功体験が最初のきっかけでした。結果が出るので、今でも続けられています。

自分で決めていくことが経営者の役割だと思いますが、自分の感覚では決められません。私が経営者になったのは2019年の11月で、すぐにコロナが始まりました。そこでもっと理解を深めなければと思い、何度も事業を見直して分析をし直しました。それがきっかけとなり、2022年には私が主導となって新規事業のフィットネスクラブを立ち上げましたが、これはランチェスター戦略に則って始めたものです。新規事業をやらなければならないと気づけたのも、ランチェスターのおかげです。これは開業前から月商300万円は確約された形で始められたので、私としてはランチェスターの答え合わせの集大成だと思っています。

今のやり方であれば、どんな店舗でも年間新規400件は取れると考えました。そのロジックから、フィットネスクラブの利益などを計算することで投資金額なども見えてきて、その結果「勝てる!」と思いましたね。

他社ではSNSやホームページを頑張るといった方法を取っているところもあると思いますが、私たちのような店舗型の集客モデルは、このやり方がまず第一のステップだと考えています。SNSやホームページは第二ステップや第三ステップであるべきだと思っています。また、成功事例があれば真似をすべきですが、それが真似できる範疇かどうかも重要です。

現在は、どのようなサポートを受けているのでしょうか

田中 様:これまでは毎月経営陣とミーティングをしていましたが、今は社員にランチェスター戦略を教えてもらうようお願いしています。2015年にランチェスター戦略を学んだときよりも社員数が増えているため、ランチェスター戦略を知らない社員が半数を越えてしまいました。そうすると私の考えもなかなか浸透できないため、統一させるためにも山口さんに入ってもらいました。そして社員の困りごとをさらに引き出してもらい、それに対して私たちが水面下で動くという流れになっています。これは私と常務執行役員とで考えたことで、意思決定は私自身がしています。

経営陣だけでなく、社員も共通理解が必要だと考えた理由は?

田中 様:自分がやって良かったからですね。若手が押し上げて会社が良くなるということがとても良かったので、それを私以外でもできるようにならないと会社が変わりません。社員の成長がなければ会社の成長もありません。山口さんには、私たちよりも社員のサポートをしてほしいとお願いしています。

社員には、ひとつでも良いので、腹落ちするキーワードを持って帰って欲しいと思っています。私が2015年に最初に行った研修で得たキーワードは、「地域No.1」だけです。しかしそれだけでも分かっていれば、どのようにその山を登ってどこで休憩するかというペース配分ができます。

「みんなが幸せ」ということが経営方針でもあるので、みんなで学んでみんなが本気で社長を目指していきたいです。しかし中にはやはり本気になれない社員もいますが、その場合はその人に合った仕事を分析して任せればいいだけなので、私はそれでもいいと思っています。

2代目や3代目に変わるタイミングで仕事のやり方を見直す、ということが重要なのかもしれませんね

田中 様:とても重要だと思います。そしてそこで社員とも共通言語を持っていなければ、社長が1人で突っ走って自滅してしまいます。例えば1日の終りに「今日はとても忙しかった」「そうなんだ、お疲れ様」という会話では、会社は良くなりません。しかし「いつも20台なのに今日は25台だったから忙しかった」という言い方であれば、「その5台はどうさばいたの?」と具体的に聞くことができ、それが新しい工具などの発想に繋がるかもしれません。私は数字などを使った具体的な会話にしていきたいと考えています。

社員も変わりましたか?

田中 様:全員が変わるということはありませんが、例えば新入社員の人が光るシーンが出てくるので、そうなると私たちも質問する際にその人に答えをまとめてもらったりします。

共通言語ができて数字を用いた具体的な話ができるようになると、困っていることもきちんと伝えてくれます。社員側の相談内容が明確なので、こちらも具体的に指示ができます。そうすると仕事もスムーズに流れていきますし、社員のやる気にも繋がるため、自然と業績も上がっていきます。最終的なやる気に繋がるのは給料や労働環境だと思うので、私たちもその点に注力しています。

小さな会社なので私が個別で社員と話す機会も多くありますが、そのときに研修で分からなかったことを質問されるととても嬉しいですね。その質問に答えるときに、今行っていることはその応用だと教えてあげると、「なるほど!」と腹落ちしてくれます。そしてさらに腹落ちした社員から良いアイデアなども出てくることがあるので、とても楽しいです。

ランチェスターは経営にとって必要不可欠な羅針盤

非常に貴重なランチェスター法則原書

今後の目標を教えてください

田中 様:まだはっきりと言えませんが、まず1つに、近隣20店舗でフランチャイズ展開を考えています。もともとはタイヤショップだけで考えていましたが、私がタイヤ屋さんの家に生まれたのは偶然のことです。ランチェスターはどの業種でもハマりますし、私たちの強みは店舗集客型なので、例えばラーメン屋さんや洋服屋さんでもいいと思っています。うちの社員たちは縁があって入社してくれている人たちが多いので、その人たちに将来的にやりたいことがあればいろいろな展開ができると考えています。次の人たちが活躍できる場を用意したいですね。

私たちはたまたまタイヤ屋さんなだけなので、お客さんとの付き合い方も「たまたまタイヤ屋さん」というスタンスでなければ、お客さんの発する「近くにこういったお店があるといいのにな」というニーズにも反応できません。

1、2年後の話ですが、社員の中からはじめて役員が出てくる予定です。なのでそのタイミングで社員からゆくゆく社長…ということも考えています。そのときの私自身の立ち位置も、今から悩んでいるところですね。

私たちは自分の業界に対する知識はありますが、他業種の状況はそれほど詳しくはありません。そこで山口さんから他業種で分析した結果なども教えていただき、それを私たちなりにアレンジしています。

田中さんにとってランチェスターはどのような存在でしょうか?

田中 様:経営は先の見えない航海だと思っているので、それには羅針盤が必要です。ランチェスターはたまたま羅針盤として存在しているだけです。店舗型であれば、全員ランチェスターに取り組んだ方がいいと思います。ランチェスターはゲーム感覚で楽しんで取り組める戦略です。

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